コバの仕上げ方法は人それぞれ
コバというのは革を裁断した断面のことです。
コバの仕上げは「何もしない」「仕上げ剤で磨く」「染料で染める」「ヘリ返して隠す」のような方法があります。
コバの仕上げをあえてしないこともありますが、コバを処理しないと繊維がほつれたり、汚れで黒ずんだりしてしまいます。
でも、コバ仕上げってネットや本で調べると、それぞれ微妙に違っているような気がするんですが・・・
そうだよね。
コバ仕上げに「正解」はないからね。結局自分の気に入ったやり方でやる人が多いんだよ。
だから、いろんな方法を試して自分の好きなやり方を探してみるのがいいよ。
ここで紹介するコバ仕上げは「正解」ということではありません。あくまで一つの方法なので、ご参考までにお願いします。
コバの仕上げ前にヤスリで整える
コバは切れ味の悪い刃物で切ったり、革を貼り合わせてサイズが微妙に違ったりすると、断面に凹凸ができてしまいます。
そのままでコバ仕上げをすると凹凸がそのままになってしまうので、ヤスリやドレッサーなどで綺麗にならす必要があります。
断面を平らにするようにヤスリを動かします。力を入れるとコバが開いてしまうので、軽い力でこするのがポイントです。
ヤスリには目の粗さで削る力や仕上がり面に差がでます。この粗さ(粒子の細かさ)の違いを「番手」と呼び、100とか400とか数字で表記されています。
数字が小さいほど目が粗く、削る力は大きいけど断面も荒々しい感じになります。逆に数字が大きいと目が細かくなり、削る力は小さいけれど、断面が綺麗になります。
基本的には数字の小さいものから使って、徐々に大きい数字のものを使い、表面を綺麗にならしていきます。
ヤスリの種類 | イメージ | 概要 |
---|---|---|
紙ヤスリ | 紙に研磨粒子が付いたヤスリで安価で革にも使いやすい。 | |
耐水ペーパー | 水に強いヤスリだが、削る時に出る黒い粉がコバに付着して汚くなるので革には不向き。 | |
布ヤスリ | 布やスポンジ状のものに研磨粒子がついたヤスリ。革にも使いやすい。 | |
ドレッサー | 持ち手がついた金属製のヤスリ。耐久性があり革にも使いやすい。 |
断面が綺麗ならヤスリがけは必要ない
レザークラフトの書籍などには、断面をヤスリで整えるというのが必須のように書かれているものもありますが、個人的には切れ味の良い刃物で切った断面の場合、凹凸がなければ、そのままのほうが綺麗に仕上げられると感じます。
革の種類によっては切れ味の良い刃物で切っても、断面が粗くなるものもあるので、そういう場合はヤスリがけします。
ヤスリをかけるのは結構面倒な作業ですし、粉塵とかも出るので、できれば避けたいですよね。
なので、革の裁断は常に切れ味の良いカッターナイフや革包丁を使って行うと、手間が省けます。
コバのヘリ落としで角を落とす
【ヘリ落とし画像】
裁断したばかりのコバは、角張っているので、コバ仕上げの前にヘリ落としで角を落とします。大根で言う「面とり」みたいなものです。
【ヘリ落としコバ拡大】
コバの角を落とすと滑らかになり、見た目のクオリティがアップします。
ヘリ落としの工具を使わない場合は、ヤスリやドレッサーで角を削るという方法もあります。
ヘリ落としが難しいなら必要ない
僕はヘリ落としを使わないですし、そもそも角を落とすことはしません。
「磨き」で工夫すれば角は取れますよ。
【ヘリ落とし失敗】
ヘリ落としは染色や絞りなどの加工がされていない、生成りのヌメ革などは簡単にできますが、革の種類によっては難しいものもあります。
また、ヘリ落としはまめに研ぐ必要があり、切れ味が悪い状態で使うと、角を落とすどころかボロボロにしてしまうことも。
これも好みの問題ですが、ヘリ落としは別になくても「磨き」のやり方で角は押さえられます。次項の仕上げ方法でご紹介します。
タンニン鞣し革のコバ仕上げ方法
タンニン鞣しの革のコバは、水をつけて磨くと繊維がまとまって硬くなります。
その特性を利用して、磨き方に工夫をすれば、ヘリ落としをしなくてもコバを綺麗に整えることができます。
まず、コバに水をつけます。銀面に染みないように少量つけたいので、スポンジを使うと便利です。
スポンジを使う場合は、ギュッと押さえずに撫でるようにつけるようにするのがポイントです。
水分が乾かないうちに、帆布で磨きます。
帆布は色のついてないものを用意しましょう。手芸屋のハギレでもいいし、コバ磨き用帆布というのも売っています。
磨き方のコツは親指と人差し指でコバを挟み込むようにし、コバの曲線を指で作って磨くことです。
矢印の大きさが力の入れ方を表していて、角を押さえるように力を入れると、革の可塑性(水をつけると変形する性質)で、角が丸く固まります。
ただし、ヘリ落としをしている場合は、逆に力はそれほど入れなくても大丈夫です(力を入れるとコバが△になってしまいます)。
角が丸くなったら、コバの面を磨きます。力は入れずに軽く磨きます。
綺麗に磨くことができれば、上の左のように、角の取れたコバに仕上がります。
水で磨くだけでもこのように綺麗にコバが仕上がります。
しかし、耐久性をつけるために、トコノールやコバ染料で仕上げるとさらに綺麗になります。
トコノールでコバを仕上げる方法
染料を使わずにコバを仕上げるのに適しているのは、コバが革の銀面と近い色をしている場合です。
上の写真の赤い革は銀面が赤で染色されていて、コバも若干赤色をしています。コバは磨くと色が濃くなるので、このような革は染料を使わない仕上げでも綺麗に見えます。
しかし、緑の革は銀面が濃い緑ですが、コバは白っぽくなっています。この場合コバを磨いても銀面との色の差が大きいので、染料を使ったほうが綺麗に見えます(好みですが)。
トコノールを指に少量つけて、コバにちょっとずつ置くようにつけていきます。
それから指で薄ーく伸ばすようにコバに塗っていきます。銀面に染みないように注意してください。
トコノールが半乾きになるまで少し時間を置いてから、スリッカーやヘラなどでコバを磨きます。力を入れすぎるとコバが開いてしまうので、軽い力で磨きます。
コバの丸みに合わせた溝が入っているものが便利です。
角も押さえながら(力はそんなに入れない)磨きます。
角に丸みがあり、艶やかに光ってツルツルになれば完了です。
個人的にはトコノールより、無色透明のコバ染料のほうがより綺麗に仕上がると感じています。
これも好みなので、使ってみて気に入ったほうを使えばいいと思います。
書籍などにはトコノールで仕上げるのが当たり前のように書かれていますが、正解はひとつではありません。
【透明染料で仕上げた】
コバ染料でコバを仕上げる方法
コバを染料で色づけして仕上げる場合、コバ専用の染料を使うのがおすすめです。銀面を染める染料とは異なるので注意してください。
今回はコバ用染料「カスタム」を使いました。「サーマルコート」や「バスコ」、「イリス」などがコバ専用の染料です。
メーカーによって粘度や色合い、ツヤなど使い心地が違うので、好みのものを見つけてください。色もたくさん種類があり、ツヤのあり・なしが選べるものもあります。
コバ染料をちっちゃい容器に必要分とります。綿棒が塗りやすいので、用意しましょう。
綿棒にコバ染料をつけて、綿棒をくるくる回しながらコバに染料を塗っていきます。できるだけ薄く塗るようにしましょう。
重ね塗りをしていくので、この段階でははっきりした色がつかなくても大丈夫です。
染料が完全に乾くまで待ってから、スリッカーやヘラでコバを磨きます。力は入れないように磨きましょう。
再び綿棒にコバ染料をつけて、コバに薄く重ねづけしていきます。乾いたらまた磨いてください。
そして、さらにコバ染料を重ねづけして・・・を繰り返すほど仕上がりはキレイになります。(3度づけしかしたことないですが)
【(1回目)塗る→乾燥→磨く→(2回目)塗る→乾燥→磨く→(3回目)塗る】のように、最後は「塗り」で終わるようにします。
3回塗るとしっかりと色がついて、艶やかでツルツルのコバに仕上がります。
うわ~コバ染めって時間と手間がかかるんですね。
そうそう、だから売っている革製品でもコバを塗っていないものが多いんだよね。
コバを塗っているかどうかで、手間のかかったものかわかるよ。